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2021/12/23、フードデリバリーサービスのfoodpanda(フードパンダ)の日本事業売却の発表がありました。他のデリバリー会社が買収するかもという希望もありましたが、デリバリーヒーローCEOの発言と、パンダライダー向けメールの文面から、撤退で確定のようです。
私、2020年9月15日、ロードショー初日に拠点に一番乗りしたフードパンダ関東第1号配達パートナーであり、ユーザーとしてかなりの数の注文もあるたけっちの横浜稼働のみでの感想を元に、なぜフードパンダが日本でシェアを伸ばせず、失敗して撤退の判断に至ったのか、その原因、要因、理由をまずは10個述べてみたいと思います。
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稼げる配達パートナーになるためのマニュアル
①店頭での料理待ちが長く、加盟店、配達パートナー双方に負担をかけるシステムで、個人店の名店、人気店の加盟が伸びなかった。
フードパンダ幹部は店頭で配達パートナーを待たせることで、出来立てアツアツの料理を届ける事が良いという認識を持っていたようで、事実加盟店営業の外注先などに、「配達パートナーはいくら待たせても良い」などと言ってよいと指示を出していたようです。
しかし、配達パートナーを店頭で待たせる事は、配達パートナーにとり非常にストレスになり、店舗とのトラブルの原因となります。実際、横浜ローカルチェーンの人気そば店、味奈登庵(みなとあん)など一度はフードパンダに加盟したが、料理待ちしていた配達パートナーと口論になり、脱退しています。
料理の待ち時間が長いと、加盟店と配達パートナーは決して良好な関係を築けません。お金が稼げなくなるからです。
また、配達パートナーが店内に長くいる事は純粋に邪魔になり、店内の雰囲気も乱します。小さい個人店なら尚更です。
そういった悪い噂が飲食業界内で広がり「フードパンダはヤバい」という事で加盟を見送った店をいくつか知っています。
店舗の雰囲気を大切にする洋食、イタリアン、フレンチなどの加盟店の少なさがそれを物語っています。
配達員を店で待たせるやり方の方が注文者的には熱い料理が届く可能性はもちろん高いのですが、やはり人気店、有名店、高級店がトラブルを嫌って加盟しないデメリットの方がはるかに大きい。
そして店内で待たされた配達パートナーは遅れを取り戻そうと、運転が荒くなり、信号無視や事故や走行クレームを多発します。
あえて言います。料理の待ち時間が長い事は悪である、と。
そして名店が加盟せず、見せかけの店舗数を増やすため、ひとつの店舗でいくつもの端末を持たせ業態を増やす、いわゆる「ゴーストレストラン」という店舗を大量登録させる手法で店舗数の水増しをしていたが、逆に数少ない良店が埋もれてしまい、顧客満足度を更に下げていた。
ちなみに出前館も、「ゴングシステム」という店舗側への負担の大きなシステムを採用していて、個人店、名店の加盟数ではUber Eats(ウーバーイーツ)に大きく水を空けられてますので、改善は急務ですね。
②店舗の商品ページの作り込みが全体的に甘く、購買意欲、食欲が刺激されず、注文成約率が低かった。
ざっとフードパンダの注文アプリを見回してみると、実店舗がかなりの有名店であっても、料理の写真が載っていなかったり、商品説明文が何も書いていなかったり、あまり注文の入らないであろう料理が上の方に表示されていたりと、非常に商品ページの作り込みが甘い店舗が多かったという印象です。とりあえず加盟させとけという感じで、その後のフォローアップコンサルなどをなにもやっていなかった印象です。デリバリーに熱心で店舗ページをキチンと作り込んでいたのは、バンバン番長さんくらいでしょうか。
加盟店契約を取るだけでなく、商品ページのライターなどもしっかり雇い、ひとつひとつの店舗ページの作り込みをしっかりするべきでした。
「ご飯もの、丼物、お弁当」を上の方に表示する、写真、商品説明をキチンと掲載する、クーポン使用などの価格調整がしやすいよう、少額のトッピングやペットボトルの飲み物などを掲載する、などのセオリーを守れていない店が非常に多かったです。
③マクドナルド、すかいらーくグループ、サイゼリヤなど人気チェーンとの契約に失敗した。
やはりアプリをダウンロードしてもらうきっかけとして、マクドナルドなど大手人気チェーン店との契約はある程度必要となります。しかしながら①で説明した配達パートナーを待たせるシステムのため、店舗現場へのストレス増加を懸念して、チェーン企業側が難色を示したものと思われます。自分たちのやり方を押し付けるばかりで、日本の企業風土を理解しようとせず、システム改善を一切しなかったフードパンダ側の怠慢に他なりません。
③リピート注文を促進する仕掛けが無かった。
どんな商売も一見さん、初回注文ばかりでは事業は成り立ちにくい物です。そのためにはリピート注文が欠かせないのですが、フードデリバリーにおけるリピート注文に成りえる一番の要素はもちろん、味です。
しかしそれはデリバリー会社側からはコントロール出来ない要素であり、また他社でも同じ店を扱っていたらあまり意味がありません。
そこでリピート注文を獲得するためにと、出前館では注文者にランク制度を導入して、注文を繰り返すほどにシルバー、ゴッド、などランクが上がったり、menuでは料理のクチコミを書くとクーポンバックがあったり、ワンピースなど人気漫画やアニメのグッズがもらえるなどの施策を打ってきました。
しかしそういった施策はフードパンダにはほぼ無く、ローソン注文でピンバッジがもらえるくらいだったでしょうか??加盟店の層の薄さを補う工夫が足りませんでしたね。
④面接、適性検査などを怠り、配達パートナーの質が低かった。
サービス開始当初は、拠点での配達員登録面接があったのですが、2020年年末からの新型コロナ第四波と共に拠点は閉鎖。オンラインのみでの登録作業となり面接も無くなったため、配達パートナーの質が悪化。加盟店離れ、客離れの一因となった。細かい住所を説明しようとしても日本語が通じず不達になってしまう事や、料理を自分で注文して自分で運ぼうとして、他の配達パートナーに割り振られるとその配達員に向かってキャンセルして下さいと言う悪質な配達員も現れました。
フードデリバリーは運送業でありますが、サービス業としての側面も持つため、コミュニケーション、言語能力の足りない配達パートナー、不良スタッフが増えて接客レベルが落ちれば、当然、利用者を伸ばす事は難しいでしょう。
⑤無理な配車、差配やインセンティブを付けない事などで悪天候時、配達パートナー不足時などに顧客の信頼を失った。
配達パートナーの人は分かると思いますが、雨などの悪天候時は、注文は増え、配達パートナーは減ります。こういった時、Uber Eats(ウーバーイーツ)、woltなどは、通称「雨クエスト」「ウォルトハント」と呼ばれる、時間限定のボーナスなどを用意したり、「シミ」「ヒート」などの配達報酬の割り増しを行いますが、フードパンダにはそういったシステムそのものがありませんでした。よって配達パートナーの稼働を確保できず、悪天候の度に顧客の信頼を失っていきました。また距離制限などの判断も他社に比べ遅かった印象があります。雨の翌日に店舗レビューを見ると、冷え冷えの料理が届いたとか、結局キャンセルになったなどの文句も多く書き込まれていました。
⑥サポートの質が非常に低く、不備があった場合の補償などが遅く、リピーターが育たなかった。
⑤の後始末としてのサポートもお粗末な処理が目立ったようです。クーポンを使って注文して、フードパンダや店舗側の都合でキャンセルになった注文のクーポンが戻って来ないなどの声が、主にサービス開始数カ月以内はよく聞かれました。私も配達パートナーとして働いている際、直接お客様から言われた事が3回くらいあります。人間一度サービスで痛い目に遭うと、早々次は使ってくれないものです。Woltの様に、代金とクーポンは迅速に返却+次回送料無料のチケットを付けるなどの処置が必要でした。スタートアップのサービスなら尚更です。
⑦個性的すぎるピンク色のバッグ、グッズなどを使用する配達員が少なく、逆に宣伝効果を上げられなかった。
フードパンダのピンクのグッズは確かに目立ち、もし多くの配達員が着用していれば宣伝効果は高いのですが、実際は無料配布にもかかわらず恥ずかしくてあまり使う人がおらず、逆に宣伝効果が低くなってしまいました。
だったら、モノトーンカラーのパンダ柄のグッズを作り、少し地味でも着用率を高めた方が宣伝効果が上がったのではないでしょうか。
自分たちのやり方を決して曲げない、良くも悪くもデリバリーヒーロー社の特徴であると言えます。
最後の方はアパレルブランドであるジャーナルスタンダードとコラボして少し落ち着いた色調のジャケットを作ったりしていましたが、少し遅かったようです。
⑧ヒット広告を作れなかった。
「でっでっ出前館出前がすいすいすい~♪」
出前館は漫才師の浜田雅功さんが出演する、「スーダラ節」のカバーソングテレビCMで一気に知名度を上げ、サービス利用者を増やしました。道端で小学生が歌ってたりなど、スーダラ節を知らない層にも新鮮に記憶に残り、近年のテレビCMのなかでもかなり印象に残るものだったかと思います。
フードパンダもコメディアンの渡辺直美さんなどを広告に起用しましたが、残念ながらキャッチィーなメロディーなどは生み出せず、またテレビ放映などの頻度も低く、スタートダッシュで知名度を上げる事に失敗しました。
出前館のようにすでに良く知られる歌のカバーにするか、優秀な作曲家など複数人にコンペさせ、「流行る」広告を仕掛けるべきでしたね。
⑨他社と差別化できるオリジナリティが無かった。
①の内容と重複しますが、配車、店舗タブレットシステム上の欠陥のためオリジナリティのある店舗ラインナップにならなかった事、また後発なのに独自性のある価値をユーザーに提供できなかった事も敗因として挙げられます。
電話受注をやってみるとか、DiDiのようにテイクアウトだけやってる店の商品を買ってくるシステムとか、menuのようにアニメ、ゲームとコラボするとか色々出来たと思います。最後の方は日用品などを販売、配送するパンダマートなども作り、先行していた地域では結構好評の様でしたが、注文増、収益化の決定打にはならなかったようです。
⑩出前館の大攻勢。
出前館は日本一のシェアを持つチャットアプリ運営会社「LINE」からの800億円にも上る多額の資金調達を受け、大規模な広告、長期間の送料無料、週変わりの半額祭りなど、Uber Eats(ウーバーイーツ)を倒すための大規模な攻勢を仕掛けてきました。しかしそこまでしても、私の地元横浜では注文数において遥かに及びません。「ここまでやってもUber Eats(ウーバーイーツ)に勝てないのか、、、」という現実を出前館の行動で見せられて、今後、Uber Eats(ウーバーイーツ)や出前館に勝つための広告に必要な費用などを試算した結果、撤退という判断に至ったと想像できます。
まとめ。
①店頭での料理待ちが長く、加盟店、配達員双方に負担をかけるシステムで、個人店の名店、人気店の加盟が伸びなかった。
②店舗の商品ページの作り込みが全体的に甘く、購買意欲、食欲が刺激されず、注文成約率が低かった。
③マクドナルド、すかいらーくグループ、サイゼリヤなど人気チェーンとの契約に失敗した。
④面接、適性検査などを怠り、配達パートナーの質が低かった。
⑤無理な配車、差配やインセンティブを付けない事などで悪天候時、配達員不足時などに顧客の信頼を失った。
⑥サポートの質が非常に低く、不備があった場合の補償などが遅く、リピーターが育たなかった
⑦個性的すぎるピンク色のバッグ、グッズなどを使用する配達パートナーが少なく、逆に宣伝効果を上げられなかった。
⑧ヒット広告を作れなかった。
⑨他社と差別化できるオリジナリティが無かった。
⑩出前館の大攻勢。
おわりに。
いかがでしたでしょうか。以上が横浜でロードショー初日から今日まで継続的にフードパンダ稼働をし、また注文者としてもかなり注文してきた私のこの度の感想です。細かい事はまだまだありますが、とりあえずパッと思いつくだけの10個です。
これらの欠点の解消は、Uber Eats(ウーバーイーツ)に勝つためには当然フードパンダ以外のデリバリー会社にも課せられているものです。この記事を参考にして、menu、Woltといった三番手以降の各デリバリー会社は打倒Uber Eats(ウーバーイーツ)、出前館を目指して頑張っていって欲しいと思います。
また、2022年1月31日までの間、この記事を読んでフードパンダを買収してくれる企業が現れないものかと、淡い期待もしています。
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